雑踏へ

幾日かあったはずなのに

あっという間に終わりを迎えている実家生活

 

明日にはもう帰らなければならないのか

 

明白な気持ちがあるわけではないけれど

帰らなければならないことが

なんとも勿体ないことのように思えてくる.

 

 

この数日だからこそ考えたことは多かった

 

 

実家であり過去を過ごした場所であるこの環境に住んでいるからこそ

思い出すことが多いのだろう

 

 

記憶は場所と結びついている.

 

 

帰ってきてから継続的に考えていることがある

 

自分はこの地で

生まれてからの18年間を過ごした

 

幼稚園に通い小学校に通い

徒歩5分の中学校で義務教育を終え

勉学と部活に捧げた高校生活を修めた.

 

 

それでもこうして故郷に帰ってくる度に

 

岐阜駅に降り立ち辺りを眺め

変わらない風景を訪問する度に

 

自分が得られてこなかったもの

これから得られるのかわからないもの

それらが心に忍び寄ってくる.

 

 

 

帰郷するたび殆どの時間を

僕は実家でぬくぬくとして過ごす

 

実家がバスで長く揺られなければ辿り着けない田舎に位置していることもあり

幾日かの滞在のうちに

その小さな町を抜け出すことはない.

 

 

 

帰郷して

夜布団に入る時

 

ふと

あの人は今何をしているのだろう

というような想いが浮かぶことがある

 

中高の部活のチームメイトや同級生について

 

今や成人式や同窓会といった

大義名分がなければ出会うことのない人達について.

 

 

この数ヶ月間

勿論数人の仕事仲間には

出会うことも会ったけれども

 

生活の凡そ殆どは

ひとり下宿で生活をしていた.

 

 

誰かに会う予定もなく

誰にも気兼ねない生活

 

朝はトレーニングをしてご飯を食べてから

少々論文を読んだりして

昼は仕事し夕方にトレーニングをする

そして夜はゆったりと映画を観たりして大体1日が終わっている.

 

 

唯々自分の為に作り上げられた生活サイクル

 

誰にも付け入る隙はない

 

 

それである程度快適だった.

 

 

しかしその生活には

心から笑ったり苦しんだりと

心が満ち足りるような瞬間はなかった 

 

良い生活だけれど

求めたい生活ではない

 

そんな空隙がいつも何処かに潜んでいた.

 

 

実家に帰ってきてこそ思う

'分かち合う'ことの価値

 

一緒に暮らすということは

感情を分かち合うことであるようだ.

 

発する感情は分かち合うからこそ

心を満たす灯りになる.

 

 

ひとりで生きるのはやはり難しい

 

この数ヶ月間をひとりで過ごしてきたからこそ

その思いは一層強くなっている.

 

 

そのようにして過去を振り返るたびに

自分が得てこなかったものの大きさを思う

 

帰省するたびに成長している兄弟を見ていると

時は確実に流れていることを実感してしまう.

 

 

僕はここで18年間を過ごしたが

今帰郷して

何かを分かち合うような存在はいない

 

既に10代は風のように過ぎ去っていて

それを共に思い出してくれる人も居ないのは

なんとも言い難く寂しい.

 

 

自分が得られてこなかったもの.

これから得ていく可能性があるもの.

 

 

時間は今も確実に失われていて

若さという資源はもはやこの手からこぼれ落ちつつあるのだろう

 

 

あと数年

恐らくこれもあっという間に過ぎ去っていくのであろう

20代としての生活の中で

僕は何を求めて生きていくべきだろうか

 

 

人生の盛りとも言うべきこのかけがえの無い時間を

どう創り上げていくべきだろうか

 

 

得られてこなかったもの

これから得られるかもしれないもの

 

 

分かち合うことのない孤独感は

長くは背負って行きたく無いものだ

 

 

これまでよりも

もっともっと力が必要かもしれないけれど

先ずは少しずつ

分かち合う瞬間を増やせるように

 

 

自らの輪を広げて

他者を受け入れる姿勢に努めていこう

 

 

一辺倒な循環ではなく

ひとつひとつの瞬間を

心満たして過ごせるように.

 

 

 

人は常に失いはじめているものだから

分かち合うことで

失うことに意味をつけていかねばならない

 

 

見方を新たに

また雑踏に戻る

 

 

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