悲劇の主人公

人はなぜか、悲劇の主人公になりたがる。

 

それも、安っぽい悲劇の中で.

もはや悲劇とは言えないくらいの。

 

 

 

うまくいかないとき、

辛いとき、

惨めなとき

 

 

 

僕らは悲劇の世界を創り上げる

 

 

 

それは救いの訪れない世界であり

先の見えない筋書きであり

存在したくない過去である。

 

 

 

 

悲劇に身を映す

 

 

 

低俗で、大量生産的な悲劇

消費経済の悲劇

 

 

 

ハムレットは自らの苦悩と戦いの末、

狂気に憑かれ命を落とす

周りの人々もまた.

 

 

運命に争い

不条理を知り.

 

 

悲劇に命を賭けた。

 

 

 

僕らの悲劇は、さながら滑稽な自己満足の走り書きに過ぎない

 

ともすれば喜劇の道化に格付けられるような

狂気を灯す血気もない

 

 

 

人は常に失い続けている生き物であり

人は得ることを求め続けなければならない

 

 

得ることは難しく

どうすれば得られるのか

分からないことの方が多い

 

 

そんな時、

僕らは苦しむ

 

遠く望めなくなり

目の前のものにどうしようもない無力を感じる

 

 

弱い僕らは

失い続けている僕らは

 

零れ落ちないようにと

自分だけの舞台を組み上げる

 

 

自らを、悲劇の主人公ともする

 

 

 

 

しかし、

 

喜劇に堕する覚悟もなく、

小手先の悲劇を演じようとするな

 

争う姿勢もなしに、世界の不条理を嘆くな

 

 

 

悲劇とは、

非情な理に争い続けてその後、

叶わぬ儚い人の常を嘆くもの

 

大いなる機構の前に人身の弱さを再認識するもの

 

 

 

弱い僕たち一人ひとりが創り上げる悲劇のプロットは

果たして悲劇と言えるだろうか

 

 

何処か、

認め難い自己から目を背け

不合理を生み出しているだけではないか

 

周りの人々を、

自らの悲劇の役者に仕立て上げているだけではないか

 

 

自らを喜劇の道化に貶す覚悟もなく

一体何が悲劇だろう

 

 

 

いくら悲劇のプリマドンナを気取ったところで

所詮滑稽な勘違いの自己陶酔者に過ぎないのだ

 

客席から眺めれば、

ただの道化役者にすぎないのだ

 

 

 

僕はそんな悲劇を否定する

 

 

 

救いなどは訪れない

 

それでも、まずは抗え

 

自己に苦悩し、不条理を知り、

それでも、抗い続けるのだ

 

 

自己を知り、自己を問い直し、抗うために動く

 

苦悩はそのプロセスに過ぎない

 

--

 

生き方を問う

 

困難に出会った時、どんな選択を取ることができるかで、

その人間の真価が測られるという

 

 

ただ己から目を背け

大切にすべき人たちを

不義理にも悲劇の一役者と飾り立て

 

知らぬ間に、己を道化役者に貶す

 

 

そんな生き方は滑稽だ.

 

 

 

僕は弱いから

幾らでも

安っぽく、そして大層つまらない、

薄っぺらい悲劇を創り上げたいという誘惑に駆られる

 

 

そんなとき、

 

自己を保ち、喜劇の道化となる覚悟で以って

自己に苦悩し抗う道を

選び取りたいと思うのだ

 

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