大阪に帰ろうと、バス停まで歩く最中、
ふるさとの匂いを嗅いだ。
思えば今回の帰省中、
まともに外を歩くことはなかった。
ふと見上げると、
吸い込まれそうなくらいに広い青空
眩しく光る緑の田んぼ
世界がこんなにも大きく思えたのは、
全く久しぶりのことだった。
当たり前に無限大で、
当たり前に色とりどりな風景というものを、
僕は忘れてしまっていたようだ。
刹那、切り取られたその眺望は僕をはっとさせ、
これから戻る場所のちっぽけさを思わせた。
風が吹けば、そこにはふるさとの匂いがした。
暖かく生き生きとした空気が体を満たす。
その匂いに後ろ髪を引かれる思いを抱きながら、
僕はまた、バスに乗り込んだのであった。