透き通った悲しみ

秋の入口

疲れ果てた夜

 

不純物のない悲しみの中に

 

ストンと

音を立てて落ち込んだ

 

それはあまりに透き通った悲しみだったから

ポツポツと歩き

ガタンゴトンと電車に揺られている他には

 

何も成す術を持ち合わせていなかった.

 

 

 

舌と胃を満たすことのない数ヶ月の時間

その切れ間に用意した

自分への褒美としての1日

 

 

締めくくりは故郷の味を

 

そう考えていたはずなのに.

 

 

悲しいのは

幸せだった1日を

望む通りに終えられなかったことだろうか

 

口いっぱいに広がるはずだった

昔という名を冠された味を

思い出すことができなかったからだろうか.

 

 

その感情はあまりに純粋な悲しみだったから

きっとすぐに混ざり合って

どこかに消えてしまうのだろう

 

しかし

 

深くて透き通ったその悲しみは

僕が心の底から求めていたものの存在を

その持ち前の透明さで以て

伝えてくれているように思うから

 

その悲しみはここにおいて

文字として把捉しておくべきだろう

 

そう思った.

 

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